No Longer Human

音楽、サブカル、ラジオ等について、経営的・定量的な視点から書いていきます。

東京ポッド許可局 懐中電灯論を経営視点で考える

 

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 パタンナー論に引き続き、またしても経営から考えるべき論が公開されました。懐中電灯論です。東京ポッド許可局を今後いかに広めて行くかということに焦点を絞った真面目な内容でした。パタンナー論に続き、最近はこうした内容が増えたように思います。今回も、この論を経営的視点から考えてみます。

 

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論の概要

大まかな論の概要は下記のような内容だったかと思います。

2017年4月10日「懐中電灯論」 https://radiocloud.jp/archive/tokyopod/?content_id=15504

  • 墨田区は自区の課題を理解し、戦略的に大学の誘致を行った。許可局においてそのような取り組みを考える際にはどのようなものが考えられるか。
  • どのターゲットにしゃべるか。年代ではなく、趣味的な属性で共通項のある層をターゲットとすべきではないか。
  • より広い層をターゲットとする場合、コンテンツの中身は浅いものとなる。
  • よりとがったニッチな分野に届く内容にとがらせるほうが良いのではないか。そのほうが広告の誘致なども行いやすいのではないか。
  • メジャーになるための努力も必要である。すべてのジャンルはマニアが殺すという考え方もある。
  • コンテンツの中身がいいことは大前提だが、それをアピールする営業は活動も必要。その両輪が必要である。
  • 最近のトレンドである、ファンの参加欲や自己表現欲を満たすようような仕組みを作ることも模索するべきではないか。

 

 上記のような議論が展開される中、お三方のそれぞれの視点は其々に違っていたと思います。大きく分けると下記のような感じでしょうか。

  1. タツオ局員:ニッチ戦略志向。メジャー・ポップをめざすより、コアなファンを少しづつ増やすことを重視。
  2. マキタ局員:プラットフォームの創造。仕組みを作ることを模索。
  3. 鹿島局員:メジャーになることを恐れない。マニアの閉じた文化圏を危惧する。

お三方それぞれの経験に基づく視点であり、非常に興味深く聴かせてもらいました。

話に出てきたいくつかの要素を経営視点で考えてみます。

 

経営視点で考える

ニッチ戦略

 タツオ局員が話していた、コアな層に届く内容に特化していくというのは、コトラーの競争地位別戦略という考え方の中の、ニッチ戦略という考え方にあたります。経営資源の限られる中小企業や、新市場への新規参入者には特に相性の良い戦略とされています。

1980年にコトラーが提案した競争戦略の理論で、マーケットシェアの観点から企業を4つに類型化し、競争地位に応じた戦略目標を提示しています。

コトラーの競争地位の類型化

  • (1)マーケット・リーダー
    最大のマーケットシェアを持ち、業界を牽引する主導的立場にある企業です。自社のシェアを維持、増大させるだけでなく、市場全体を拡大させることが戦略目標となります。
  • (2)マーケット・チャレンジャー
    業界で2、3番手に位置づく大企業で、リーダーに挑戦しトップを狙う企業です。市場戦略による利益への影響を分析するPIMS研究によると、一般にシェアが高まると収益性が高まることがわかっています。そのため、攻撃対象を明確にし、競合他社の弱点をつくなどしてシェアを高めることを戦略目標とします。
  • (3)マーケット・フォロワー
    業界で2、3番手に位置づく大企業ですが、業界トップになることを狙わずに競合他社の戦略を模倣する企業です。製品開発コストを抑え、高収益の達成を戦略目標とします。
  • (4)マーケット・ニッチャー
    シェアは高くありませんが、すきま市場(ニッチ市場)で独自の地位を獲得しようとする企業です。扱い商品の価格帯や販売チャネルなどを限定し、専門化することで収益を高めることを戦略目標とします。
  • 経営用語の基礎知識 | 野村総合研究所(NRI)

※実は過去にマキタスポーツ氏の「すべてのJ-popはパクリである」の感想を書いた時にもこの図を使いました。

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STP分析

 論の中では、代理店によるマーケティングや、ターゲット設定に関しての話題がありましたが、これらの話はSTPというマーケティングの概念に近いものです。

STPマーケティングとは、効果的に市場を開拓するためのマーケティング手法の事。マーケティングの目的である、自社が誰に対してどのような価値を提供するのかを明確にするための要素、「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の3つの頭文字をとっている。フィリップ・コトラーの提唱した、マーケティングの代表的な手法の一つ。

セグメンテーション(segmentation、セグメント化)
市場における顧客のニーズごとにグループ化する、市場をセグメントする。様々な角度から市場調査し、ユーザ層、購買層といった形であぶり出し、明確化していく。簡単に言うと切り口という意味。マーケットセグメンテーションも参照。
ターゲティング(targeting、ターゲット選定)
セグメント化した結果、競争優位を得られる可能性が高い、自社の参入すべき市場セグメントを選定する。選定には、複数のセグメンテーション軸を組み合わせて行なうことが一般的である。その際には、ターゲットの経済的価値(市場規模、成長性)やニーズを分析することが重要である[1]
ポジショニング(positioning
顧客に対するベネフィット(利益)を検討する。自らのポジションを確立する。そのためには、顧客のニーズを満たし、機能やコスト面での独自性が受け入れられるかがポイントとなる。

STPマーケティングにより戦略の基本的方向性が定まると、次には4Pにより実際の各個別戦略が策定される

STPマーケティング - Wikipedia

ポジショニング

 論の中ではどのような人が許可局を聞いているのかといった話題もありました。以前より局員の方々の属性は非常に多種多様であまり類を見ないファン層だなと思っていたのですが、今回は自意識と教養という軸をもとに許可局の現在のポジショニングを考えてみました。完全に私見ですが、現在許可局が築いているのは、自意識・教養は高いながらもサブカルにもオタクにも振り切らない層、ライトな文化系に対するポジションなのではないでしょうか。それを表すのが下記の図です。

※教養が低いところにオタクが入っているなど、かなり怒られそうな分類ですが、ここは思い切って分類してしまっています。

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 許可局イベントには何度か参加しましたが、待ち時間に見る客層が、どのイベントでも見たことがない特殊な客層(年齢性別がバラバラ)であったことからこのように定義してみました。

 このように許可局は他の競合があまりいない独特なポジションを取っていることから、ポッドキャストというメディアからここまでメジャーになることができたのではないでしょうか。

ターゲティング・セグメンテーション

 許可局のポジションがわかったところで、今後局員の数をより増やすにはどのような方向性が考えられるかについても考えてみます。それが下記の図です。

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 ここでは縦軸に先ほどのポジショニングで使用した4つの文化属性、横軸には年代を置いています。先ほど局員はサブカルに振り切れないライト文化系と定義しましたが、ここではシンプルにするためにサブカル・文化系の3-40代を既存ファンの層としています。

 局員からのおたよりでもわかるように、局員は20代~70代までファンがいることから、これらの層は潜在ファン層といえるでしょう。また、近い分野として、オタク層や知識層にもボリュームゾーンの年代を中心に相性の良い層があるのではないでしょうか。そうした点より、上記図の中では潜在ファンのエリアを設定しています。

 闇雲に新しい層を開拓していくよりも、自分たちと相性の近い分野の層を開拓していくほうが、反応も良く、また既存のファンを失う可能性も低いでしょう。

 開拓の具体例としては、開拓したいターゲットが多くいるメディアや時間帯などに進出していくことが等が考えられます。例えば、早朝の時間帯に放送して高齢者層を取り込むことや、session22等の番組に出演し、知識層等の層を取り込むことなどが考えられます。他にも、若い層向けにyoutubeチャンネルを開設する、高齢層向けに新聞メディアに露出するといった取組みも考えられます。

 

ブログ管理人が考える許可局戦略

 論の中では、やはり多くの人に知ってもらう努力はしていくべきだという結論でした。僕もエンターテイメントである以上、あまり閉じた文化圏にはならないほうがいいと思います。すべてのジャンルはマニアが殺すという言葉、まさしくその通りだと感じています。

 今後より多くの人に知ってもらおうとする際、僭越ながら経営視点で要点を書かせていただくのなら、僕は「自分たちの強みが生かせる形であることを忘れない」ということだと思います。

 経営ではSWOT分析という考え方があります。

組織を、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの軸から評価する手法のこと。企業戦略の立案時などに用いられる。「強み」「弱み」の軸は企業の内部要因であるとされ、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」などについて分析が行なわれたうえで、それらが外部要因に対してどれほど力を発揮できるかが評価される。一方、「機会」「脅威」の軸は外部要因とされ、「経済状況」「技術革新」「規制」といったマクロ要因と「競業他社」「顧客」「ビジネスチャンス」といったミクロ要因についての分析が行なわれる。このような、内部要因と外部要因とをそれぞれ軸にした表を作成し分析することで、戦略の対処策を立案、実行することがSWOT分析である。

SWOT分析とは - コトバンク

 SWOT分析の発展形として、クロスSWOTというフレームワークがありますが、これは現状ある機会に対して自社の強みを活かすことのできる戦略を考えるというものです。

 つまり、今後許可局がより認知度上げるべく、様々な取組みを行う際、許可局特有の強みを活かせる内容であれば上手くいくのではないかということです。

 自らの強みを生かせる分野であれば、認知度が上がっても消費はされないのではないでしょうか。以前春日太一さんがwowowぷらすとにて「自信の専門分野である時代劇の説明力を買われ、全く時代劇と関係のない分野の説明をしてほしいというテレビのオファーがあり、これは消費されてしまうと感じて断るようになった」という内容の話をされていました。これは自信の専門性と全く関係ないことを求められ始めたため、消費されてしまうと感じたのではないでしょうか。

 では、許可局における強み・専門性とはなんでしょうか。僕はラジオ内でもキャッチコピーとして使われている「屁理屈をエンターテイメントに」という言葉にそれは表れていると思います。論の中でもタツオ局員は教育+笑いという非常に強いポジションを築き上げたという話がありました。許可局のお三人はそれぞれ、芸人+αを持っている方々です。(専門分野=屁理屈)+(お笑い=エンターテイメント)という足し算が、許可局特有の強みといえるのではないでしょうか。毎度小難しい話であるのに、重い雰囲気にならないのはそのためだと、僕は考えています。

 

 

 このような事は、当然お三方もご承知の事だとは思いますが、経営の考え方を使うと、根拠や裏付けのある考え方となります。今後のも僕の人生の支えである許可局が発展していくことを、願ってやみません。