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漫画寄生獣の3つのテーマをアニメ版はどうアレンジするのか

 

新装版 寄生獣(1) (KCデラックス アフタヌーン)

新装版 寄生獣(1) (KCデラックス アフタヌーン)

 

 

最初に

 アニメ版寄生獣を見た。最初はキャラクターの見た目から、なんだか劣化現代版としてのアニメでしかないのかなと早とちりしてしまった。
 が、よくよく原作を見返せば、いまのところかなり原作を丁寧になぞっていると気が付いた。

 これは今期注目のアニメだと再認識したので、一度原作のテーマを確認し、今後の展開を考えてみる。
※内容は原作のネタバレを含みます。

 

・原作の3つのテーマ

 

①単純に少年が苦難を越えて大人になっていく物語 人間ドラマ


 寄生獣の面白さは単純に人間ドラマの深さという視点もある。この部分だけでも十分楽しむことができる。主人公シンイチの心の変化、家族との関係、パラサイトへの心情の変化、パラサイト自身の心の変化等。この人間ドラマの再現は、アニメ版でも当然重要な要素。

 

②エコ思想がもつ人間本位の独善的な価値観への批判


 寄生獣の最大のテーマはこのエコ思想への問題提起といえる。原作連載時も今と形は違えどエコ・環境問題についての関心が盛り上がりを見せていた時期だった。そして現在も当時とは別の形でエコ・環境問題への関心、エコ思想は高まりを見せている。

 

 当時 連載期間 1990年ー1995年 (WIKIから)
    キーワード:オゾン層保護法制定 エコマーク導入  京都議定書等 
    エコノミックアニマルとしての日本(1970~80年代)
    ➡この汚名を返上しようと環境対策が盛り上がりを見せていた時期

 

 現在 キーワード:反原発 自然 オーガニック エコポイント 

        省エネ家電 ハイブリッドカー等
    原発問題から急激に再生可能エネルギー拡大へ向かう日本。

    化学技術から自然回帰を望む層の増加。

 

※↓この年表を見ると環境問題とその対策の変遷が見て取れる。


年表から知る環境問題 | NHK ECO CHANNEL エコチャンネル

 

 この部分のテーマを共有したまま、どう現代版にアレンジするのかかが一番重要な部分になるのでは、と思う。安易に原発問題を取り上げると、急激に説教臭い話にまとまってしまいがちなので、そのあたりをどのように自然に扱うか、もしくはあえて扱わないのか、気になる部分。


・人間こそが寄生獣

 また、物語が進むにつれて、当初は強力な怪物としての印象が強かったパラサイトが、総体としては人間に排除される弱い存在として表現されていく。その象徴として、パラサイトでありながら市長を務める広川は、人間こそが地球にとっての寄生獣であるという発言をする。

  やはり当時非常に画期的だったのは、この人間こそが地球にとって一番の害悪ではないのかという視点。人間の好きな動物だけを保護していく、人間にとって理想の地球環境を目指す、その独善さ、欺瞞を浮き彫りにする内容だった。


③母親の喪失という心の闇  身近なコミュニティの問題


 エコ問題と共に大きいテーマなのが、母親からの愛情という問題。原作では、パラサイトに母親を乗っ取られ、母親の愛を信じられなくなったシンイチの心の闇を救ったのは、田宮良子(身内以外の存在)による無償の愛情だった。今回はここも現代版にアレンジするのだろうか。
※似たようなテーマで「まわるピングドラム」では「疑似家族」という一つの解決策が示された。このアニメではどのような回答になるのか。
 

 

・原作とアニメ、テーマは共通


 今回のアニメ版のテーマは?


10月に放送が迫る話題沸騰のTVアニメ『寄生獣 セイの格率』! 監督&プロデューサーへのインタビューを本誌から特別公開! - アフタヌーン公式サイト - モアイ


 基本的に原作のテーマを踏襲すると、製作陣は発言している。
 では原作のテーマをどのように現代版にアレンジするのか。今後に注目。

 


・セイの格率って?


アニメ版のタイトル「セイの格率」とはどういった意味なのか?

コトバンクでは以下のように書かれている。

 

格率:世間で広く認められている行為の基準。また、それを簡潔に表した言葉。格言。金言。処世訓。

格率とは - コトバンク

 

 単純に考えると、環境問題等を踏まえて人間はどのように生きていくべきか?というようなテーマかなと思う。

 生の格率でなくセイの格率としているのは、どういった含みを持たせるのか。

 

・ 数字で見るエコ、環境問題への関心 

 最後に、前半でエコ・環境問題に対する関心が高まりを見せていると書いたが、それはあくまで社会的関心事項ということである。

 実は単純な世論の数字で見ると、環境問題(取り分け自然について)に関する関心は近年徐々に低下している。

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環境問題に関する世論調査 -内閣府 

https://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=20437&hou_id=15543

※上記資料もとにブログ管理人作成

 

 国が何年かに一度「環境問題に関する世論調査」という調査を行っているらしい。

 調査の詳細はリンクを参照すれば確認できるが、幾つかの質問事項に対し5段階評価でのアンケートを行っている。今回はその中でも「自然に関する関心」という非常にザックリした項目に注目してグラフを作成している。

※国の資料には平成24年までのグラフしかなかったので、26年度版の数値を入力して一覧のグラフを作成してみた。

 このデータを見ると2011年の震災を境に、世論の自然に対する関心はむしろ低下傾向にあることがわかる。特にグラフ青色部分「非常に関心がある」の低下は顕著である。

 

 こんなグラフをわざわざ作って何を言いたいか。寄生獣のテーマは今、結構需要があるんじゃないか、ということである。

 もちろん、「自然に関する関心」という非常にふんわりした項目の変化だけで、この結論につなげるのは強引だとは思う。国の調査資料にはなぜ近年自然への関心が下がっているのかという要因の分析は全く行われていない。根拠としては弱い。が、全く関連がないとは言えないのではないか。

 

この関連性が高いかどうかは、今後のアニメの盛り上がり次第、ということにしよう。

 

 

・その他

 ケイクスでの堀江氏と田原氏の対談の記事。この記事はまさに現代で寄生獣のテーマを感じる内容だなあと思ったのでリンク。


【第3回】リスクは本質的にはゼロにはならない|バラ色の国家解体論ーーもう国家はいらない|田原総一朗/堀江貴文|cakes(ケイクス)