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ヴィンランド・サガ20巻 感想・考察 ラグナロクに向けて

 

ヴィンランド・サガ(20) (アフタヌーンKC)

ヴィンランド・サガ(20) (アフタヌーンKC)

 

 

 

はじめに

ヴィンランド・サガ20巻が先日発売されました。このブログでは度々考察している当作品ですが、20巻ではあまり話に進展がなく、少し展開をじらされたような印象でした。

 とはいえやはり面白い漫画であることには変わりはないため、今回も題材となるテーマ、内容の要約、今後の展開といった点に関して書いていきたいと思います。

※いつものように、ネタバレを含んだ内容のため、ご注意ください。

↓19巻の考察

 

loki16185.hatenablog.com

 

 

20巻の要約

  • トルフィンはギョロメと合流し、ヨムスボルグに向かう
  • ガルムはヴァグンの首を持ってフローキのもとに戻るも、トルケルとの火種をつくったことを責められ、投獄されることに
  • フローキはトルケルに向けて、ヴァグンを横取りしたガルムと和平のための使者を送り、戦争を避けようとするが、トルケルはまともに取り合わない。交渉決裂の際に、交渉材料にならなかったガルムは、トルケル軍に引き渡される。
  • 戦争前の余興としてトルケルはガルムとの決闘を行う。そこで互角の戦いを見せたガルムはその功績を認められ解放される。ヴァグン軍・トルケル軍・フローキ軍のいずれにも属さずに、トルフィンとの戦闘を目論んでいるようだが、、、
  • ガルムに人質にされたエイナルらは、バルドルの意向により解放されるが、グズリーズだけが逃げ遅れることになる
  • トルケル・フローキの戦争が開戦、そこへトルフィンが到着。トルフィンは、それぞれ立場の異なる人物、トルケル・エスキル・シグルド・エイナルと遭遇し、グズリーズがまだ敵地に残されていることを知らされる。

※こうしてみると、19巻でヨムスボルグでの戦争が示唆されてから、20巻では開戦するまでしか話が進展していないことになります。丁寧に描いているともとらえられますが、少しテンポが悪いようにも感じます。

 

20巻のテーマ

20巻の話の題名はすべて「バルト海戦役」です。そのため、題材となるテーマも、前回のブログで書いた内容と同様、「復讐と赦す」「ノルド戦士の末路」の2つです。

 

 復讐と許し

前回の記事でも書きましたが、17巻のヒルドを巡る「狩るもの狩られるもの」から復讐と赦すというテーマは継続しているものです。これにはトルフィンはヒルドに赦されるのか、トルフィンはフローキを赦せるのかという二つの要素があります。

 

loki16185.hatenablog.com

 

 20巻ではそれに加え、ヨムスボルグの戦争の中を、人を殺さずに事態を収拾できるのか、グズリーズを救出できるのかという視点が加わりました。戦闘のプロ集団を相手に、殺しを避けて事態を収拾するのは困難ですが、ヒルドにはその行動を監視されており、トルフィン自身、どのように事態を収拾するべきか答えが出ていないようです。いくつかのシーンからそれを読み取ることができます。

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↑レイフを救ってほしいとギョロメに頼まれ、ノルド戦士への敵意をのぞかせるトルフィン。しかしその手には、復讐を止めるという記号であるカルリを抱いており、2つの相反する想いが併存していることがうかがえる。

↓カルリについて言及した過去記事

 

loki16185.hatenablog.com

 

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ヒルドの問いかけに対し、正面から応えないトルフィン。迷いがあることをおもわせる。

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 ↑グズリーズ救出を託されるも、明らかに覚悟が決まっていないことがわかるシーン。

 

 

ノルド戦士の末路

バルト海戦役においては、ヴァイキング・ノルド戦士の異常性と、その終焉を思わせるシーンが多く描かれます。

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↑トルケルとガルムに関しては、死にたがりのノルド戦士の象徴としてのシーンが多く描かれる。また、トルケル・フローキの戦争の中でも、ノルド戦士がいかに死ぬことを軽く考えているかが強調されるシーンが繰り返し描かれる。

※また、アスゲートより、ガルムはトルケルの息子である可能性が示唆される。確かにボサボサな髪質は似ている。

 

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 ↑そうした中で、ノルド戦士の中でも殺し合いの連鎖から解放されたがっている者がいることが描かれる。この戦争が、ノルド戦士にとってのラグナロクであることを予感させる。

 

今後の展開

 一巻まるまるかけて、ヴァグン(エスキル)、トルケル、シグルド、ヒルドという、ヴィンランド探索編に重要人物はヨムスボルグに集結しました。20巻のラストであえて彼ら全員とトルフィンが対峙する構図にしたのは、21巻で彼らを巡る伏線をすべて回収する予定であることを予感させます。さすがに、21巻では物語としてかなり大きな展開を見せるのではないでしょうか。想定されるトピックスは下記のような項目です。

  • トルフィンがフローキと対峙した際に、自分の復讐心とどう向き合うのか。そのトルフィンをヒルドはどのように判断するのか。(グズリーズが逃げ遅れたのは、作品上トルフィンとフローキが対峙するための理由としか考えられない)
  • ガルムとトルケルは誰と戦い最後を迎えるのか。2人とも死亡フラグがビンビンの状態。しかし、この二人は一度直接戦ってしまった。もう一度この二人は対峙するのか。また、ガルムはトルフィンと戦うのか。現状だとガルムに人質をとられているわけではないため、戦う理由がないが、、、
  • バルドルは命を落とすのか。20巻のやり取りを見る限りは、どうも生き残りそうな雰囲気。北欧神話において、バルドルラグナロクの際に一度死に、その後よみがえる存在とされている。彼はラグナロクの後、ノルド戦士を導く存在となるのだろうか。

バルドルについて wikipedia 2018/1/1現在

『ギュルヴィたぶらかし』[編集]

ロキにそそのかされたヘズに射られて倒れたバルドル。アーサー・ラッカムによる(1901年)。

ヘルモーズを迎えるバルドルとヘル。18世紀のアイスランドの写本『NKS 1867 4to』より。
『スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』[4]では、『古エッダ』とはまた異なるエピソードが語られている。

バルドルは神々の中でもっとも美しく万人に愛された。ある日から悪夢を見るようになると、これを心配した母フリッグは世界中の生物・無生物に彼を傷つけないよう約束させた。そのため、いかなる武器でも彼を傷つけることは出来なくなった。だがこのとき実は、たった一つ、ヤドリギだけは若すぎて契約が出来ていなかった。

傷つかなくなったバルドルを祝い、神々はバルドルに様々なものを投げつけるという娯楽にふけっていた。だが、ヤドリギのことを知ったロキが、バルドルの兄弟で盲目のために遊戯の輪から外れていた神ヘズをたぶらかし、ヤドリギ(ミスティルテイン)を投げさせた。これによりバルドルは命を落としてしまった。

これを嘆いたフリッグに応えて、バルドルの弟のヘルモーズが死の国ヘルヘイムへ向かい、女王ヘルに彼を生き返らせてくれと頼んだ。ヘルは「本当に、全世界の者が彼のために泣いているというならば生き返らせてやろう」と約束した。

フリッグの頼みで、本当に全世界のあらゆる生物・無生物が彼のために泣いた。ところが、たった一人、巨人の女セック(ソック)が泣かなかったのでバルドルは戻ってこなかった。このセックの正体は実はロキで、このことから彼は神々に捕らえられ罰を受けることになった。

バルドルの死によって光を失った世界は、やがてラグナロクを迎える。『ギュルヴィたぶらかし』[10]及び『古エッダ』の『巫女の予言』[11]の伝えるところでは、オージンをはじめとして多くの神が死に、世界は滅ぶ。やがて新しい大地が浮かんでくると、バルドルはヘズと共によみがえってくる。

21巻は物語的に大きな盛り上がりみせることは間違いありません。次巻の発売を期待しましょう。